はじめに


☆天然自然の恵みであり、地球環境に最も優しいエネルギーでもある温泉。

十分な温度、湧出量及び種々の障害を引き起こさない 泉質 を兼ねた温泉であれば、これ程有難いものはなく、まさに天地自然の恵みと言えます。

 

 しかし、このような理想的な温泉は少なく、殆どの温泉は 大なり小なり何らかの障害を抱えており関係者の方々は、温泉供給のため 日夜大変なご苦労をされております。

 

 温泉供給上一番難題で、且つ障害例の多いのが、炭酸カルシウム主体のスケールに起因する 様々なトラブルです。

 

 私は、1990年 あるご縁で 別府温泉の噴気沸騰泉源泉井内のスケール対策に取り込むことになりました。

それまでは、源泉井内のフラッシングポイントと呼ばれる個所でのスケール析出により 自噴が停まってしまうため、一日置きに ウインチ操作による掃除矢で、    付着スケールの除去を余儀なくされておりました。

 

 当然 泉源掃除中は 温泉は供給されず、しかも削り落されるスケールの粉が 噴気と共に飛び散り 近辺で問題になり また一日置きのパターンの前に自噴が 停止していた事例も多く その場合 1日掛かりで回復作業を行わなければなりませんでした。

特に掛け流しスタイルの別府においては、冬期におけるこのような自噴停止は致命的事態です。

 

 抗底温度150~160℃と推定される泉源井内での、炭酸カルシウム主体の    スケール抑制剤の選定現場テストの結果、

                 ホスホン酸塩 主成分のものがベストでした。

 耐熱・耐加水分解性に優れ しかも安全性が高く 安心して使用できます。

 

 一方、それまで温泉スケール防止剤として 一部で使用されていた  ポリリン酸塩 は、泉温が高い温泉では   それ自体が急激に加水分解されて、逆に リン酸カルウム スケールになり、ブランクよりも悪い結果でした。

 いろんなタイプのポリリン酸塩をテストしましたが、全てブランク以下の結果で

温泉スケール防止剤とは言えないものでした。

 

 別府市泉源においては、その後 年1・2回の点検作業を行うことで、安定した温泉供給が確保され 今日に至っております。

 

 別府で確立された 炭酸カルシウムスケールの抑制技術は 日本全国のスケール問題を抱えた温泉でその現場に合わせて設計した「T・S・Cシステムユニット」と相俟って、相乗効果を発揮しております。

 

 炭酸カルシウム主体のスケール対策は、最初に温泉を詳細に解析して 対策を きちんと設定すれば それ程大変なことではありません。

その後は、薬液タンクに スケール防止剤を補充するだけの作業で スケール障害が解消され 温泉安定供給が確保されます。

  

 温泉は個々に特色を持っており、厳密に同じ温泉はないと言えます。

当然、泉質上 スケールとは全く無縁の温泉は沢山あります。

スケール問題を抱えている温泉は、「温泉分析書」を詳細に解析してみますと

スケールが、炭酸カルシウム主体か否か、しかもどの時点からスケール障害が発生するのか迄 読み取ることができます。

 

 後は、源泉から温泉施設までのフローを見て、どこにスケール防止剤を どの位の量を どのような方法で添加すればよいのかを設定することです。

 

 温泉スケール対策は、どのような温泉に対してもワンパターンで 薬剤を適量添加しておけばいいと言う訳ではありません。

前述のように、温泉は個々に特色を持っており、仕立屋さんのように、その温泉に最適なプログラムを組まなければ 最良のスケール抑制効果が得られません。

 

 私の20数年に亘る 温泉スケール対策の実績が、少しでもお役にたてれば幸いです。